「野上下郷石塔婆」は三波川帯の結晶片岩の薄くはがれる特徴(片理)を利用した日本一の板石塔婆です。高さ約5m厚さ13cm、応安2年(1369)に建てられたものですがしっかりしています。
裏山には板石塔婆の石材を採掘した跡が残っています。
樋口の小学校の校庭の山ぎわの変成岩に「水」の文字が刻まれています。江戸時代の寛保2年(1742)の洪水記録です。ここは秩父盆地に降った雨水のすべてが集まる盆地に降った雨水の唯一の出口です。ここまで水が上がったことを示す貴重な記録です。
高砂橋下流のライン下り船着場左岸の岩に雁が連なって飛んでいく光景を連想させる模様が見られます。変成岩の割れ目に石英や方解石の白い鉱物が染み込んだものです。傾きによって左上がりのミ型、右上がりの杉型に分けられ、岩石にかかった力の方向を推定することができます。
町指定の天然記念物である枝垂桜・アラカシ・ナツグミなどがある。アラカシの下には戦国時代の武将 藤田康邦の墓があり「法善寺殿天山繁公大禅定門」と刻まれている。
風布への道を登ると道路の対岸の沢のわきの石にみごとな褶曲が見られます。赤鉄鉱含有石英片岩(赤鉄片岩)で赤鉄鉱の赤色と石英の白の縞模様が創る横臥褶曲です。「菊水岩」と呼ばれており、長瀞町の天然記念物に指定されています。
親鼻橋の上流、荒川の右岸に橋のたもとの大きな岩体は、世界的でも珍しい貴重な紅簾石の露頭です。明治21年(1888年)小藤文次郎博士が世界で初めて記載し報告しました。紅簾石はマンガンを含む紫~紅色の鉱物です。
岩の上には、人が隠れるくらいの大きなポットホールも見られます。岩のくぼみに取り込まれた硬い石が川の流れによって回転し削ったもので、長瀞地域にはあちこちにあります。丸くなった石が残っていることもありますが多くは失われてしまいます。
荒川左岸に露出するこげ茶色と白の縞の褶曲が見られる石を虎の毛皮に似ていることから「虎岩」と呼んでいます。こげ茶色の鉱物はスティルプノメレンという鉱物です。白い鉱物は方解石です。大正5年(1916)宮沢賢治は「つくづくと 粋なもやうの博多帯 荒川ぎしの片岩のいろ」と詠みました。