秩父市荒川上田野(かみたの)の、しだれ桜で有名な清雲寺の隣に若御子神社があります。その境内から急な山道を10分ほど登っていくと、「若御子断層洞」という洞窟があります。(中は立ち入り禁止です)
入口から懐中電灯で照らすと、断層洞の開口部のすぐ正面の岩壁に、テカテカした「断層鏡肌」を観察できます。断層鏡肌は、断層がずれたときに、両側の岩石が擦り合わされて磨かれたもので、表面には線状のすり傷(条線)があります。洞窟はこの断層面に沿って延びています。
この断層洞は、秩父帯の硬い岩石(チャートなど)が断層の動きによって砕かれてもろくなったところ(断層破砕帯)が、水の流れによって侵食されてできた空洞であると考えられます。1975年の洞窟調査報告書によると、左奥には深さ13mの縦穴があり、両壁には断層面が露出していました。縦穴の底には4~6mの深い池(プール)があり、断層で砕かれた「断層角礫(だんそうかくれき)」の堆積物が見られたそうで、断層洞の特徴をよく表しています。
この断層は秩父盆地と南側の奥秩父山地との境界をなす断層「日野断層」の一部です。若御子断層洞の他にも大小いくつかの断層洞があります。これらは、「若御子断層洞及び断層群」として埼玉県指定天然記念物になっています。