蓬莱島は、荒川に削り残されてできた四角い島です。長瀞一帯の三波川帯の結晶片岩は、ほぼ南北方向と東西方向に、碁盤目状の割れ目(節理:せつり)が走り、荒川は、その碁盤の目を縫うように、カクカクと直角に曲がりながら流れます。
地図を見ると、四角い蓬莱島の周りを取り巻くように荒川が流れているのがわかります。蓬莱島の東側には小沼、藤沼、箱沼という沼があり、かつてはここを荒川が流れていました。洪水のときには、この旧流路にも増水した水が流れ込み、蓬莱島が完全な島になることもあります。
蓬莱島へ旧流路を渡る橋の手前側には、見事な横臥(おうが)褶曲が見られる場所があります。横臥褶曲は、まだ岩石が地下深くにあるときに、大きな力を受けて折り畳まれたものです。硬い岩石が飴のように逆S字型に曲げられているさまを見ると、ダイナミックな地殻変動を実感することができます。
蓬莱島は、もともと向林(むこうばやし)と呼ばれていましたが、昭和28年(1953)に蓬莱稲荷を祀ったことからこの名で呼ばれるようになりました。5月にはヤマツツジが咲き誇り、長年にわたって町民の憩いの場として親しまれてきましたが、平成28年(2016)に新たに蓬莱島公園として整備されました。長瀞渓谷の絶景を望むことができ、紅葉の時季もおすすめです。