秩父鉄道「上長瀞駅」から荒川に向かうと埼玉県立自然の博物館の前に着きます。川側の駐車場には宮沢賢治の歌碑があり、脇の道を下ると川べりに出ます。川の近くにある茶褐色と白の縞模様が見られる盛り上がった岩場が「虎岩」です。
この岩は茶褐色のスティルプノメレンと白色の長石や石英などが重なって縞模様をつくっている「スティルプノメレン片岩」です。折り畳まれるように褶曲して、トラの毛皮のような模様に見えることからこの名が付けられました。この岩は地下深部の高い圧力の下で形成されたものです。また、縞模様を横断するような白い鉱物は方解石で、地上に上がってくる途中でできた割れ目に入ったものです。
スティルプノメレン片岩には金色に輝く正六面体の黄鉄鉱(おうてっこう)の結晶が見られるので探してみましょう。上流の緑色の緑泥石(りょくでいせき)片岩には、黒光りする正八面体の磁鉄鉱が入っていることもあります。
大正5年(1916)の地質巡検の際に長瀞を訪れた宮沢賢治は、虎岩を見て『つくづくと「粋なもやうの博多帯」荒川ぎしの 片岩のいろ』 という歌を詠ったといわれています。
宮沢賢治が「粋」な博多帯になぞらえた歌をかみしめながら虎岩をじっくり観察してみましょう。