札所34番日沢山(にったくさん)水潜寺は、秩父札所巡礼の最後に参拝する寺で「結願寺」といわれます。西国、坂東、秩父のそれぞれ三十三番あった札所に1つ加えることで、日本百観音の結願寺となったと伝承されており、江戸時代の『観音霊験記』にもそのいわれが書かれています。観音堂内には、百観音巡礼を終えた巡礼者の笈摺(おいずる:巡礼者が羽織る白衣)や金剛杖、菅笠、千羽鶴などが納札とともに奉納されています。
奥の院にある石灰岩体には「水潜りの岩屋」と呼ばれる鍾乳洞があります。かつては巡礼を終えた人々がこの岩屋をくぐり、身を清め(胎内潜り)、俗界に戻っていったと伝えられ、寺の名の由来となっています。また、鍾乳洞から流れ出る水は「長命水」として飲むと長生きできると伝えられています。 現在、岩屋は崩落の危険がありくぐることはできませんが、湧き水が本堂近くまで引かれており、水を汲んで手を清めることができます。
水潜寺の石灰岩体は、泥岩中にチャートなどとともに混在したものですが、これは、海洋プレートが海溝に潜り込むとき、岩塊がバラバラになって泥と混ざってできたもので、「メランジュ」(混在岩)と呼ばれます。
約2億年前に大洋で生まれた岩石が、人々の信仰によって大切に守られ、秩父の大地の成り立ちを静かに物語っています。