昔の人が、畑の日が暮れてもしばらく陽が当たって輝くこの大きな崖を見て、太陽の当たる崖という意味で「ようばけ」と呼んだといわれます。「ハケ」とは崖の古い言い方です。高さ約100m、幅約400mに及ぶこの露頭は、秩父盆地に厚く堆積している約1550万年前の新第三紀の地層が侵食されてできたもので、「日本の地質百選」に選ばれています。
この地層は、古秩父湾がだんだん浅くなっていったころの海底(水深約20m ~ 200m)で堆積したもので、崖の下半部の泥質砂岩を「奈倉(なぐら)層」、上半部の粗い縞模様の砂岩泥岩互層を「鷺ノ巣(さぎのす)層」と呼んでいます。最近では、これらはまとめて「秩父町層下部」とも呼ばれ、秩父盆地の南西部から中央そして北東部まで、盆地内に広く分布している地層です。
暖流が流れ込んだ暖かな海底に堆積したこの地層からは、パレオパラドキシア、チチブクジラ、サメ、ウミガメ等の脊椎動物化石や貝、カニ、ウニなどの化石がたくさん見つかり、特にようばけ周辺は古くから多くのカニの化石が産出されることで有名です。
土地の隆起に伴い、ようばけは約10万年前から赤平川の侵食を受け、崖になりました。約13万年前の赤平川の流れは今よりも約50m高いところにあり、伊古田(いこた)や品沢(しなざわ)の谷へも流れていました。その後、大地の隆起と川の侵食が進むにつれて本流の川面が下がると、伊古田や品沢へは川が流れ込まなくなり、赤平川は地層の断面に衝突するようになって流れも曲がり、削られて大きな崖となりました。ちなみに、ようばけの北側には「はさみばけ」という崖があります。ようばけは現在も赤平川の攻撃斜面にあるため侵食が進んでいますが、川面が下がって「はさみばけ」の崖からは川の流路が離れたため、はさみのような谷がそのまま残ったと考えられます。
ようばけの近くにあるおがの化石館は、パレオパラドキシアの骨格模型や、当地産出の化石や世界の化石などが展示されています。2階にはようばけが観察できる望遠鏡もあります。