小鹿野町立長若(ながわか)小・旧中学校脇の道を西に向かい、橋を渡って右に折れると札所32番般若山(はんにゃさん)法性寺の鐘楼門に着きます。宝永7年(1710)に建てられ、1階に仁王像、2階に鐘を吊るした珍しいものです。石段途中右側の石灯籠は、徳川家の菩提寺である芝の増上寺(東京都港区)にあったものです。また、この寺には、長享2年(1488)に書かれた秩父の札所番付があり、現在の順番は、江戸からの巡礼者向けに変えられたことがわかります。
右に砂岩層を見ながら、「秩父の苔寺」ともいわれる苔むした境内の石段を上ると、懸造りの観音堂があります。裏は「タフォニ」という岩崖になっていて、蜂の巣状の構造の奇妙な穴(ハニカム)が多数見られます。岩石の中の塩類が表面に染み出し、水が蒸発すると塩類の結晶が成長し、岩石の表面を崩していく基本はコレ! 風化現象によってできたものです。
少し戻って、沖縄の世界遺産・斎場御嶽(せーふぁうたき)に似ている岩の間をくぐって山道を登ります。鎖を頼りに進むため注意が必要です。途中にもタフォニがところどころに見られ、金毘羅様が祀られた「龍虎岩」や十三仏が安置された岩窟などの見どころがあります。
さらに進んでいくと、「お船岩」と呼ばれる大きな船のへさきのように突き出た砂岩の上に出ます。 この砂岩は、ようばけの下部と同じ「奈倉層(秩父町層下部)」です。ここが札所32番法性寺の奥の院で、南側に登った鉄梯子の上の岩窟には大日如来像が、北側の断崖絶壁の岩の上にはお船観音像があります。恐怖を克服して岩上を進むと、秩父盆地がよく見渡せる絶景ポイントになっています。