秩父盆地の西にある小鹿野町は、西方から流れ込む赤平川の段丘上に発達した古い町です。国道299号を西に進むと三田川(みたがわ)地区に入り、鉄砲まつりで知られる飯田を過ぎると、急に山が迫り狭い谷に入ります。駐車場近くの見学路入口から赤平川へ下り、下流へ歩くと左岸に典型的な不整合があります。
犬木の不整合は、前原の不整合とともに、古秩父湾誕生の地といえる場所です。露頭面左下に見られる黒色の泥岩は、約1.3億年~約1億年前の中生代白亜紀前期(恐竜の時代)に堆積した泥岩層です。その上には、古秩父湾が存在した約1700万年~約1500万年前の新第三紀中新世(哺乳類の時代)に堆積した砂岩や礫岩があります。約1億年の時間を隔ててそれぞれの地層が接しているのです。
このように、2つの層の間に大きな時間的不連続が認められる関係を「不整合」といいます。 基底礫岩(地層がたまり始めたときに堆積した礫岩)がまん丸で、海岸の礫の特徴を示しています。下流の中新世の地層からはパレオパラドキシアの骨化石が見つかっています。
ここより西は、山中白亜系(山中層群)の地層が広がる地域で、群馬県を経て、長野県佐久穂町まで続く凹地帯になっています。アンモナイトや三角貝、植物化石がたくさん見つかっており、群馬県側では恐竜の化石も見つかっています。