小鹿野町両神小森地区を流れる小森川の奥にある丸神の滝は、埼玉県では唯一、「日本の滝百選」に選ばれている滝です。江戸時代後期、文化・文政期(1804 ~ 1830)につくられた『新編武蔵風土記稿』でも紹介され、滝が多い秩父でもこれほど景観のよいものはないと評されています。
この滝は秩父帯の砂岩にかかるもので全体が3段になり、1段目が落差12m、2段目が14m、3段目が50m、全体で76mほどある巨瀑です。秩父盆地の西側にそびえる両神山の東に延びる尾根から、およそ1000m近い急峻な地形を流れ下る滝越沢(たきごしざわ)にあります。
秩父多摩甲斐国立公園内にある両神山は、小鹿野町と秩父市にまたがる標高1723mの山で、「日本百名山」の1つとしても有名です。古くは山岳信仰の霊場であり、特に江戸時代には秩父の修験道の聖地として栄え、各地から多くの行者が訪れました。
両神山は東西約8km、幅2 ~ 3kmに及ぶ巨大なチャートの岩体からできています。秩父帯のチャートからは、古生代ペルム紀から中生代ジュラ紀までの放散虫化石が見つかっています。放散虫の骨格のケイ酸からできているチャートは侵食に強く、そのためこのようなノコギリ状の山容になったものと思われます。プレートの動きによって海洋プレートの堆積物が剥ぎ取られて大陸プレートに押し付けられた(付加された)地層は、急傾斜で滝ができやすい地形をつくります。