ジオストーリー、つまり「大地の物語」は、ジオパークの見どころ(ジオサイト)や関連する要素を紐づけて一つの壮大な物語を構成し、そのストーリーの中でそれぞれのジオサイトをより深く楽しむためのものです。ジオパーク秩父では、メインテーマ、サブテーマを基に、4つのジオストーリーを設定しています。
古くから、地球、そして日本列島の成立ちを知り、大地の営みを感じることができる特別な場所であったこの秩父において、地域住民共通の財産であるジオサイトを守り、活かし続け、未来永劫語り継いでいく担い手を育てていくことを目的に設定しました。(守人は「もりびと」と読みます。)
明治時代、日本の近代地質学の夜明けから、秩父ではその先駆けとなる様々な研究が行われてきました。
「地球の窓」とよばれる長瀞の岩畳を代表として、日本列島形成における重要な地質資源を観察できる場所として、東京からほど近いここ秩父へと、著名な研究者から学生まで多くの人々が訪れてきました。
ここでは、ジオパーク秩父を『日本地質学発祥の地』として語りながら、深く係わりがあるジオサイトや拠点を巡り、かの宮沢賢治やナウマン博士に思いを馳せて、秩父の大地が教えてくれる地球の成立ちを探ってみましょう。
はるか昔、秩父盆地には海が広がっていました。山々を背にした豊かな海で生命の営みが繰り広げられ、そこでは、今日「パレオパラドキシア」や「チチブクジラ」と呼ばれる大型の海獣たちが入り江で泳ぎまわっていたのでしょう。
海であったころの記憶が刻まれた地層が見られる6つの露頭と9つの海棲哺乳類化石は、平成28年、「古秩父湾堆積層及び海棲哺乳類化石群」として、国の天然記念物として指定を受け、その価値が再評価されました。
ここでは、約1700万年前に生まれ、約1500万年前に消滅した「古秩父湾」に焦点を当て、海だったころの秩父へタイムスリップをしてみましょう。
切り立った岩山を背にしたお堂、霧深い奥山に佇むお宮、岩屋に並んだ名もない石仏。昔からこの地に暮らした人々は、雄大な山々や珍しい地形・巨大な岩などに神秘を感じ、信仰の対象としてきました。
秩父は、古来より近在から遠来の人々の信仰を集める地。秩父三社や秩父三十四所観音霊場などに代表される寺社には、人々が特異な地形に神秘を感じ、大切に守り伝えてきた特別な場所が数多くあります。今、その場所はジオサイトとしてジオパーク秩父の見どころとなっています。
悠久の時を経て大切に守り継がれてきた特別な場所を巡り、人々の信仰と大地との繋がりを感じながら、心の旅に出かけてみましょう。
秩父の人々の暮らしの歴史は、その時代時代で地域に活力を生んできた産業や、根付いた固有の文化に彩られてきました。いつの時代も変わらないのは、大地の恵みを享受し、それを感謝し、大地とともに生きてきたということです。
秩父の里では、絹織物で発展した秩父夜祭の歴史を知り、奥秩父に目を移せば、秩父鉱山の貴重な鉱石の輝きに魅せられた平賀源内の挑戦を知ることができます。それもこれも、大地の物語とは切っても切れないものであることに、きっと気がつくはずです。
あの名所も、この食べ物も実はこれも「ジオ」だった!そんな驚きを、秩父の地でたくさん探してみましょう!